フィルターについて

MCF / SAW : MCF

MCFで実現できる中心周波数と通過帯域幅の範囲

MCF (Monolithic Crystal Filter )は水晶板上に複数の電極を設け、その電極間での振動エネルギーの結合を利用してフィルタ特性を実現します。
このMCF は1962 年に旧東洋通信機(現エプソン)が世界で最初に開発し、今日まで多くの種類のものが開発され、 特に無線通信機器の中間周波フィルタ用として数多く使用されています。以下にのMCFについて、基本的な構成、特長などを紹介します。


図1 Z板人工水晶における切断方位


基本構成


図2 厚みすべり振動


のように1 枚の水晶板の上に構成する電極の数によって、2ポールと3ポールを実現することが出来ます。
3ポールは2ポールに比べて減衰特性を急峻にすることが出来ます。


表1 AT、BT カットの周波数の関係


測定について

(1)減衰量および群遅延の測定
減衰量や群遅延はネットワークアナライザを使用して測定します。このとき測定治具の内部にネットワークアナライザのインピーダンス(50Ω)とフィルタのインピーダンスZtとの整合回路を設け、フィルタインピーダンスZtを正確に設定して測定します。

(2) 相互測定

相互変調特性は表現方法が2 種類あります。IMとIPで、それぞれの考え方を下記に示します。

MCF/SAWについて:SAW

弾性表面波(SAW/SurfaceAcousticWave)は、水面上を伝わっていく波と同じように弾性体の表面にエネルギーが集中して伝搬する波であり、その振幅は深さ方向に対して指数関数的に減衰します。SAWは図1に示すように圧電基板上に配置した櫛形電極(IDT/InterdigitalTransducer)によって発生・検出することができ、その周波数(f)は、表面波の伝搬速度をV、IDTの周期をλとして、f=V/λで与えられます。
伝搬速度は基板材料により異なる値をもち、例えば、STカット水晶の場合は約3100m/secとなります。SAWデバイスに最も適した周波数帯は数10MHz~2GHz程度ですが、その上限と下限は微細電極パターンの解像度と基板材料のもつ特性および大きさにより決定されます。


図1 樹形電極(IDT)


SAWデバイスは、その用途によりフィルタと共振子に大別できます。
SAW共振子はさらに1ポート共振子と2ポート共振子の2種類に分けることができます。1ポートSAW共振子は、中央にIDTを置き、その両側に反射器を構成したもので、IDTにより励振したSAWを両反射器間に閉じこめることにより高いQを持つ共振子を実現することができます。


図2 1ポートSAW共振子


2ポートSAW共振子は中央に入・出力のための2つIDTを持ち、その両側に反射器を配したもので、1ポートSAW共振子と同じメカニズムにより高いQを実現します。2ポートSAW共振子は低損失で非常に狭帯域のバンドパスフィルタであり、増幅器1段と組み合わせて帰還ループを構成することにより容易に発振させることができます。このため1ポートSAW共振子と同様によく使われており、特に高周波において真価を発揮します。2ポートSAW共振子は使用される発振回路により必要とされる位相条件が異なります。このため共振周波数での位相シフト量(180°または0°)の指定が必要となります。


図3 2ポートSAW共振子


SAWフィルタは、広帯域のトランスバーサルSAWフィルタと比較的狭帯域、低損失のSAW共振子フィルタの2種類に分類されます。
トランスバーサルSAWフィルタは入力および出力用のIDTにより構成され、入力IDTにより励振されたSAWは基板の表面に沿って伝搬し出力IDTにより検出されます。トランスバーサルSAWフィルタの周波数特性はIDTの重み付けにより決定されるため、無調整で所望の特性が得られます。


図4 トランスバーサルSAWフィルタ


共振子フィルタの1つの方式として2つのSAW共振子の音響結合を利用したダブルモードSAW(DMS)フィルタがあります。
DMSフィルタは同一基板上に近接配置した2つのIDTを持っており、この2つのIDT間の音響結合により励起される、周波数の異なる共振モードを利用し、モノリシック・クリスタル・フィルタ(MCF)と同様の原理でフィルタを実現します。DMSフィルタにはIDTをSAWの伝搬方向に対して平行に配置した横結合ダブルモードSAW(T-DMS)フィルタ(図5参照)と、伝搬方向に沿って配置した縦結合ダブルモードSAW(L-DMS)フィルタ(図6参照)があり、縦結合DMSフィルタは横結合DMSフィルタに比べて広い通過帯域と低いインピーダンスを実現します。


図5 T-DMSフィルタ



図6 L-DMSフィルタ


L-DMSフィルタのパターン構造は、2ポートSAW共振子とほとんど同じです(図3を参照して下さい)。
ただし、2ポートSAW共振子は高次の共振モードを抑制し、1次の共振モードのみ使用するように、L-DMSフィルタの方は、1次と2次のモードで大きな応答が得られるように設計されている点が異なります。共振子フィルタのもう1つの方式として、ラダー型SAWフィルタも開発されています。図7に示されるように、ラダー型SAWフィルタは、数個の1ポートSAW共振子をラダー型に接続してフィルタを構成します。 ラダー型SAWフィルタではSAW共振子の数、各共振子の周波数などを選択することで、所望のフィルタ特性を実現できます。


図7 ラダー型SAWフィルタ


SAWデバイスの基板材料は多様な材料の中から、要求された特性に合わせ決定されます。
周波数の安定性が要求されるSAW共振子や狭帯域SAWフィルタには温度特性の優れた水晶基板が使用されます。
また広帯域SAWフィルタには、高い電気機械結合係数を持つタンタル酸リチウム(リチウムタンタレート:LiTaO3)やニオブ酸リチウム(リチウムナイオベート:LiNbO3)等の材料を利用します。


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