第4回 富士山を測れ 伊能忠敬VSシーボルト

2010年1月

第4回 富士山を測れ 伊能忠敬VSシーボルト 高精度測定が可能な水晶圧力センサ

江戸後期、実測に基づく初めての日本地図をつくり上げた伊能忠敬。彼が富士山の標高(3776m)の測定にも挑んでいたことをご存じでしょうか? 忠敬は測量値をもとに富士山の標高を算出しました。忠敬に続き測定に挑んだのは、オランダ商館医シーボルトで、日本で初めて気圧計を用いた標高測定を行いました。伊能忠敬とシーボルト。偉人として名高いこの2人は、富士山の測定といい、忠敬の地図がきっかけとなった「シーボルト事件」といい、何かと不思議な因縁で結ばれていたようです。さてシーボルトが用いた気圧高度計は気圧と高度の比例関係を利用したものですが、今日でも高度測定には圧力センサが用いられるなど、工業、セキュリティ、医療、環境などではより高精度な圧力センサが求められています。エプソントヨコムは、QMEMS技術を用いた水晶振動子と独自構造により、液体の圧力を直接測定できる小型・高精度水晶圧力センサを製品化しています。

伊能忠敬は測量で富士山に挑んだ

伊能忠敬(1745~1818年)の活躍した江戸の後期、人生は50年と言われました。そんな時代に忠敬は50歳になってから測量・天文学を学び、最初の日本測量の旅に出たのはなんと56歳の時。遠征は第10次にまで及び、うち9回は忠敬が実際に帯同したそうです。しかしながら地図は忠敬の生前には完成せず、「大日本沿海輿地全図(伊能図)」が完成したのは忠敬の死後3年たってからでした。

「大日本沿海輿地全図」は実測を元にした正確な地図で、当時の西洋の地図技術と比べても遜色ないレベルに到達していました。そのため幕府はこれをトップシークレットとして隠し、開国を迫っていた諸外国はこれをなんとか入手しようとして、後にさまざまな事件が起ることになります。
伊能忠敬の測量法は、方位と距離を基本にしたものです。車輪の回転数で距離を測る「量程車」や縄や鎖を用い、時には歩測も用いたようです。方位や角度の測定には象限儀、方位盤という道具が使われました。
忠敬は富士山をいろいろな場所から測定しており、初めて富士山の高さを導きだしています。測量場所と時期によって諸説がありますが、おおむね3900mだったと言われています。

伊能忠敬が使った道具の一部

気圧計による測定を行ったシーボルト

さて、伊能忠敬の次に富士山の測定に挑んだのはシーボルトです。オランダ商館医として来日していましたが、自然学者・博物学者でもあったシーボルトは来日中に日本の自然や風土を研究しており、その一環として富士山の高度を測定することにしました。
シーボルトが用いた測定方法は気圧計を用いた高度測定で、高度が上がるに従って気圧が低くなるという原理を応用したものです。 1828年にシーボルトは弟子の二宮敬作を富士山頂に登らせ、その測定結果から富士山の高さを 約3794.5mと算出しました。富士山の標高は3776mですから、その誤差はわずか20mほどです。
このように富士山の高さの測定では、シーボルトに軍配が上がりましたが、その後、シーボルトは伊能忠敬が編纂した日本地図をどうしても欲しくなり、ひそかに入手。国外に持ち出そうとして発覚し、多くの関係者が処罰された「シーボルト事件」が起きました。伊能忠敬とシーボルトは直接会うことはありませんでしたが奇妙な縁で結ばれていたのかもしれません。
シーボルトの研究やその薫陶を受けた弟子たちは、西洋の測量術が日本に広まるきっかけとなりました。また気圧計はバロメータと呼ばれ、今日さまざまな事象の変化の指標を表す言葉として広く使われています。

なぜ気圧で標高がわかったか?

測高公式

QMEMS技術により実現した小型・高性能な水晶絶対圧センサ

今日でも高精度な高度測定や気象測定など、さまざまなシーンで気体や液体の圧力の変化を測定する高精度な圧力センサが使われています。しかし圧力センサは、これまで小型化すると精度や安定性などの性能が低下し、一方高性能を求めると構造が大きくなるという技術的課題がありました。

そこでエプソントヨコムでは、QMEMS技術による音叉型水晶振動子の採用と、オリジナルの受圧構造を開発することで、高精度・高分解能で小型の水晶圧力センサを開発。小型ながら高精度という特長により、水位計測、産業プロセスにおける圧力計測の可能性を広げています。


QMEMSを用いた圧力センサ

高精度水晶圧力センサ XP-7000シリーズ

  • 独自構造により液体圧力を直接計測
  • オイルやガスを使わないクリーンな環境性能
  • 用途:水位計測、産業装置における高精度圧力計測
圧力計測範囲 0~100kPa(ゲージ圧)
圧力特性制度 ±0.05 %FS 以内
温度特性 ±0.05 %FS 以内
動作温度範囲 -10℃~+50℃
外形寸法 φ22mm×40mm (突起部含まず)

高精度水晶圧力センサ XP-7000シリーズ

  • 独自の受圧構造で小型ながら超高精度
  • 高度計、圧力測定、動体感知、セキュリティに応用可能
圧力計測範囲 0~150kPa(ゲージ圧)
総合圧力精度 ±10Pa
分解能 0.1Pa
動作温度範囲 -20~+70℃
外形寸法 25×25×H 20mm (固定部除く)

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