水晶デバイスとは?役割、製造工程、主な用途を解説

1. 水晶デバイスとは 2. 水晶デバイスの製造工程 3. 水晶デバイスの用途

水晶デバイスとは

「水晶」と聞くと、占いに使う水晶玉や、アクセサリーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。無色透明で美しく輝く水晶は、その物質的特性から電子部品の材料素子としても使用されており、私たちは、水晶を使用した電子部品を「水晶デバイス」と呼んでいます。水晶デバイスは、“産業の塩”と呼ばれるほど電子機器になくてはならないものです。

水晶の特性

それではなぜ水晶を電子部品の材料として使用するのでしょうか。それは水晶の物質的特性である「圧電現象」と、それによる高い周波数安定性が関係しています。圧電現象とは、水晶を代表とする結晶材料に対し、圧力を加えると表面に電荷が発生する現象のことです。反対に、外部から荷電すると結晶材料が変形する現象を「逆圧電現象」と言います。この性質を持った材料素子として、水晶(SiO2)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)に代表される単結晶材と、チタン酸バリウム(BaTiO3)等の多結晶材(圧電セラミックス材)があります。各材料それぞれ一長一短ありますが、振動の安定性では水晶が一番優れています。

水晶デバイスの役割

水晶デバイスは、人間に例えると「心臓」の役割だと言えます。心臓が止まると体の機能が停止してしまうように、水晶デバイスが止まるとシステム全体が停止してしまいます。また、脈拍が崩れ不静脈が起こると体になんらかの異変が生じるように、水晶デバイスで振動のリズムにズレが生じるとシステムにおいて誤作動が起きる可能性があります。水晶デバイスを「心臓」とするならば、そこから出力される信号が「血液」、その信号が生み出す周波数は「脈拍数」に例えることができます。このように水晶デバイスはシステム全体を正常に動かす原動力として、高い精度で安定して周波数を生み出し続けることができるため、心臓に例えることができます。

roll

水晶デバイスの製造工程

水晶には、天然水晶と人工水晶があります。天然水晶は不純物の混入やひび、形状のばらつきなどの短所があるため、水晶デバイスに使用される水晶は品質の安定した人工水晶を用いるのが一般的です。

material

人工水晶は、天然水晶のかけらを原料として、「オートクレーブ」という大型の超高圧圧力容器で製造します。

autoclave


次に、出来上がった人工水晶が音叉型振動子になるまでをご紹介します。

process

水晶デバイスの用途

水晶デバイスは、安定した周波数を生み出すことができます。そのため、特に高い精度が求められる用途において、周波数を制御する電子部品の一つとして周波数標準や時刻の基準などに使用されています。

時計

水晶が使用されているクォーツ時計は、内部ICで1秒ごとの電気信号を生成しています。水晶振動子は内部ICの発振回路に組み込まれ、その1秒の基準として発振し続けています。水晶振動子によって、正確な1秒が生成されています。

基地局

4G、5G用無線通信基地局は、GPS信号やセシウム等の原子発振器による超高精度な基準信号の元で動作しているため、使用される水晶デバイスは非常に高精度である必要があります。電圧で周波数ずれを制御するVCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator: 電圧制御水晶発振器)や温度補償回路を内蔵したTCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator: 温度補償型水晶発振器)はその基準信号に同期し、ノイズのある信号をクリアーな信号に変換する役目をしています。また、基地局の無線周波数の基準クロックを供給する役目もしています。
外部の温度変化の影響を受けないよう恒温槽に入ったOCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator: 恒温槽一体型水晶発振器)や高精度TCXOは、ppm(parts per million)よりも3桁精度が良いppb(parts per billion)クラスの安定度を持っています。そのため、GPS信号等の超高精度な基準信号が万が一途切れた場合のバックアップ用に使用されています。

5Gネットワーク

5GをベースとしたIoT ・ADAS(先進運転支援システム)導入に伴うデータトラフィックの増加が顕著となっており、ネットワークインフラは今まで以上に重要なものとなっています。大手ITベンダー中心にデータセンター敷設が加速する中、内部やデータセンター間に使われる光モジュール向けの小型の水晶発振器のニーズが高まっています。5Gネットワークに使用される水晶デバイスは、小型、低ジッター、高精度を実現した製品がおすすめです。

>OIF規格準拠、400~800G小型光トランシーバ設計に最適な小型高精度発振器は こちら

電気自動車(EV)

電気自動車に用いられる二次電池はリチウムイオン電池が主流となっています。このリチウムイオン電池はエネルギー効率が高い反面、危険性も高いため、車に搭載する電池全体を管理するBMS(バッテリーマネジメントシステム)を併せ持つことが必須になります。BMSとはリチウムイオン電池の入出力電流・電圧や温度などをモニターし管理するシステムです。電池の電圧上限値を上回る過充電、電圧下限値を下回る過放電や電池セル間の電圧に差が生じると、バッテリーの故障やライフサイクルの低下につながり危険となります。そのためBMSはエンジンオフ後も含めて定期的に電池を監視する必要があり、タイマーとして RTC 機能を必要とするアプリケーションです。

>車載機器の時計精度と消費電流の課題を解決するRTCモジュールは こちら


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