周波数偏差とは?常温偏差や周波数温度特性との違い、単位、例、測定方法を解説

周波数偏差とは?意味や定義をわかりやすく解説

「周波数偏差」とは、「周波数許容偏差」とも言い、動作条件の変化等による周波数の基準値(f)からのずれ(Δf)を比(Δf/f)で表したものを指します。基準値(f)とは、例えば32 MHzの場合は、32.000000 MHzであり、公称周波数と言う場合もあります。

周波数偏差とは?常温偏差や周波数温度特性との違い

周波数偏差の動作条件が常温あるいは+25 ℃となっている場合は、「常温偏差」と表記しているデバイスメーカーもあるため、項目だけではなく条件や注記を詳しく確認する必要があります。 「周波数温度特性」と表記されていて特に指定がない場合は、+25 ℃時点での発振周波数を基準値(f)とし、周囲温度の変化による周波数の変化(Δf)を比(Δf/f)で表したものを指します。 「周波数偏差」、「周波数許容偏差」の条件に温度範囲が示してある場合には、「周波数温度特性」もこの中に含まれることになります。すなわち温度範囲も含めた基準値(f)からのずれ(Δf)を比(Δf/f)で表したものになります。
さらに、「周波数安定度」や「周波数精度」との表記が用いられる場合もあり、この場合も条件や注記を詳しく確認する必要があります。同じ表記を用いている場合でも、デバイスメーカーによって条件が異なることがありますので、注意が必要です。

周波数偏差の単位(ppm)

周波数偏差の単位に「ppm」を使う場合があります。ppmは、parts per millionの頭文字をとった略称で、100万分のいくらの割合であるかを示します。百万分率(ひゃくまんぶんりつ)とも呼ばれています。例えば、1 ppmは100万分の1となり、弊社仕様書では「×10-6」と表記しています。また、百分率である%で表すと1 ppmは0.0001 %となり、反対に1 %は10,000 ppmです。以下、本記事においても「ppm」ではなく「×10-6」の表記をします。

周波数偏差の例

例えば、32 MHzの水晶発振器の周波数偏差が±10 x 10-6と記載されている場合、
32 MHz x -10 x 10-6 = 32 x 106 x -10 x 10-6 = -320 Hz
32 MHz x +10 x 10-6 = 32 x 106 x -10 x 10-6 = 320 Hz
計算となり、31.999680~32.000320 MHzまでの周波数範囲で発振する水晶発振器である、と言えます。計算式の詳しい解説は後ほど紹介します。
電子機器などの一般的な使用用途の場合は、±30x10-6前後が多く、一方で車載用途や無線通信など、より高い安定性が求められる使用用途では±10x10-6などの厳しい周波数偏差が求められます。

周波数偏差(+25 ℃)の測定方法

水晶振動子は発振回路に挿入した際の測定方法、水晶発振器は周波数カウンターを使った測定方法があります。 水晶振動子単体の周波数の測定については、正確な周波数を求めるために高価な測定器や専用治具等々が必要になるため、水晶デバイスメーカーなどの専門家に依頼するのが得策です。 ここでは、水晶振動子を発振回路に挿入した際の測定方法と水晶発振器の測定方法をご紹介します。 いずれの場合でも、正確な周波数を測定するためには、高精度な基準クロック(OCXO以上推奨)が必要になり、温度管理された空調室での測定が重要です。

水晶振動子を発振回路に挿入した測定方法

周波数のみではなく、発振回路の評価方法になりますが、以下のテクニカルノートに詳細をまとめています。
発振回路の評価方法(1)
発振回路の評価方法(2)

周波数カウンターを使った測定方法

周波数カウンターに直接信号を入力する測定方法です。測定回路は以下のページでまとめています。
発振器の出力波形と測定回路

水晶デバイスと偏差(バラツキ)

一般電子部品と比較して、水晶デバイスは周波数偏差が非常に小さくなります。一般電子部品の偏差(バラツキ)は10-2(%)オーダーであるのに対して、水晶デバイスの周波数偏差は10-6(ppm)オーダーになります。水晶は、性能の良さを表す「Q値」が他の素材と比較して非常に大きく、発振周波数が安定している素材です。他の素材を使った発振器でも周波数補正等により、周波数偏差が水晶デバイスと同等なデバイスがありますが、Q値の違いがあり、ジッタ等の特性に影響があります。

エプソンの水晶発振器の特性

エプソンの水晶発振器は、一般用途向けから車載、無線基地局などの高精度が要求される使用用途向けまで幅広くラインアップしています。また、電磁ノイズの発生を抑える「EMI対策」ができる製品や、低位相ジッタを実現した製品、外部の温度変化による影響を最小限に抑える温度補償回路付きの製品も取り揃えています。

電磁ノイズ対策についてはこのページでまとめています。
電磁ノイズ対策とは?ノイズ発生源と対策方法、水晶発振器によるEMI対策について
製品情報:SG-9101CG (Size: 2.5 x 2.0 mm)
製品情報:SG-9101CGA (車載用、Size: 2.5 x 2.0 mm)

低位相ジッタ特性を持つ水晶発振器の製品情報はこちらです。
いずれもOIF規格準拠、400G+小型光トランシーバ設計に最適な小型高精度発振器です。
製品情報:SG2520シリーズ(Size: 2.5 x 2.0 mm)
製品情報:SG2016シリーズ(Size: 2.0 x 1.6 mm)

温度補償回路付き高精度発振器の製品情報はこちらです。
製品情報:温度補償回路付き高精度発振器


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