第5回 薄さを極めた「黄金ヴェール」

2010年4月

第5回 薄さを極めた「黄金ヴェール」 加賀百万石を支えた金箔加工技術とQMEMSフォトリソ技術

※能装束「庵に草花文様唐織」(1856年)

飛鳥時代(5世紀後半)、仏教とともに伝来したといわれる技術のひとつが金箔加工です。大陸から伝わり、16世紀に加賀(金沢)で花開いた金箔の製法は、金合金の薄板を特殊な和紙(打ち紙)に挟んで段階的に叩き延ばしていくというもの。一見単純そうですが、そこには、極限までの薄さを追求しながらも、品質をできる限り安定させるための工夫が織り込まれていました。そして、金箔の性質を熟知した箔押し加工技術により、美術工芸品の耐久性向上に貢献したのです。水晶振動子におけるQMEMS技術も金の薄膜を利用し、安定した品質や特性を実現するとともに、デバイスの小型化を実現しています。

100分の3ミリから10000分の1ミリへ

金箔の製法は、叩く工程が機械化された以外、現代も数百年前と大きく変わっていないと考えられています。原材料は純金ではなく、加工性を高めるために微量の銀などをブレンドした金合金。桃山時代や江戸時代には、小判がそのまま用いられました。これを溶かして、厚さ100分の3ミリ程の「延金」にすることが、金箔づくりの第一歩。この延金をおよそ6センチ角に切った後、打ち紙に挟んで数百枚重ね、金槌で叩くという工程を一定回数繰り返し、金箔の前身となる「澄」がつくられます。その後、澄はさらに叩き延ばされて金箔となるのです。その厚さは、およそ0.1~0.3ミクロン。向こう側が透けて見えるほどに薄い「黄金のヴェール」です。ミクロンレベルの金箔は、非常にデリケートで、指で触れただけでも本来の輝きを失ってしまいます。これを制御して貼り合わせたり、木や紙などの異素材に接合したりすることを可能にしたのが、漆を接着剤に使うというテクニック。立体物に美しく金箔を貼るには、糊の役割を果たす漆の性質を熟知し、扱いに長けている必要がありました。


水晶振動子を息づかせる黄金のヴェール

現代の水晶デバイスの世界でも、小型・薄型化の追求は、重要な課題となっています。たとえば音叉型水晶振動子は、水晶素板に金の電極パターンを接合したシンプルなつくりですが、その製法は、金箔と同様に複雑でデリケート。エプソントヨコムでは、QMEMSを用いることで、超小型でありながら良好な特性を持った製品を実現しました。そのカギとなったのが、フォトリソ加工と金属薄膜形成技術です。その加工方法は次の通りです。水晶ウェハの両面を研磨して金とクロムを 成膜し、さらにフォトレジストをコーティングして音叉外形を焼付け現像すると、フォトレジストは音叉形に残ります。これを保護膜として水晶ウェハのエッチングを行い、音叉外形を形成(外形エッチング)。そして、形成した音叉形の水晶素板上に、外形エッチングと同様の方法で、今度は電極パターンを形成します。正確に金の薄膜を剥がれないように乗せていくプロセスには、工芸品の金箔加工と共通するものがあります。

機械加工とは桁違いの緻密さ

こうしてつくられた音叉型水晶振動子の、金電極の厚さは0.1ミクロンレベル。しかも、外形寸法のバラつきは、わずかに数ミクロンと、従来の機械加工に比べて桁違いの小型・薄型化と高精度化を実現しています。さらに、QMEMSは、水晶振動片を3次元化にすることで、電極面積の有効活用をも可能にしました。この結果、従来の音叉型水晶振動子に対して、およそ50%の小型化を達成しています。限界を超えて薄く、精巧に、そして安定的に。エプソントヨコムのQMEMSは、まさに画期的なテクノロジーです。


 
FC-12M

FC-13E

FC-13D

FC-13A
公称周波数範囲 32.768kHz 32kHz~77.5kHz 32.768kHz
周波数許容偏差
(+25℃)
±20×10-6 ±30×10-6 ±100×10-6 ±20×10-6 ±20×10-6, ±30×10-6, ±50×10-6
動作温度範囲 -40~+85℃ -40~+125℃
直列抵抗
(C1値)
90kΩ Max 75kΩ Max 80kΩ Max
外囲系寸法 2.05×1.2×0.6t mm Max. 3.2×1.5×0.48t mm Max. 3.2×1.5×0.38t mm Max. 3.2×1.5×0.9t mm Max.

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