水晶振動子について:水晶発振回路

水晶発振回路

1. 基本的な発振回路例(基本波の場合)

図7 に標準的な基本波発振回路を示します。


図7 標準的な基本波発振回路


発振が定常状態のときは、水晶のリアクタンスXe と回路側のリアクタンス-X 及び、 水晶のインピーダンスRe と回路側のインピーダンス(負性抵抗)-R との関係が次式を満足しています。


また、定常状態の回路を簡易的に表すと、図8の様になります。


図8 等価発振回路


安定な発振を確保するためには、回路側の負性抵抗‐R |>Re.であることが必要です。図7 を例にとりますと、回路側の負性抵抗‐R は、


で表されます。ここで、gm は発振段トランジスタの相互コンダクタンス、ω ( = 2π ・ f ) は、発振角周波数です。

2. 負荷容量と周波数

直列共振周波数をfr 、水晶振動子の等価直列容量をC1、並列容量をC0とし、負荷容量CLをつけた場合の共振周波数をfL 、fLとfrの差をΔf とすると、


なる関係が成り立ちます。
負荷容量は、図8の例では、トランジスタ及びパターンの浮遊容量も含めれば、C01、C02及びC03 +Cv の直列容量と考えてよいでしょう。 すなわち負荷容量CL は、


で与えられます。発振回路の負荷容量が、CL1からCL2まで可変できるときの周波数可変幅"Pulling Range(P.R.)"は、


となります。
水晶振動子の等価直列容量C1及び、並列容量C0と、上記CL1、CL2が判っていれば、(5)式により可変幅の検討が出来ます。
負荷容量CL の近傍での素子感度"Pulling Sensitivity(S)"は、


となります。
図9は、共振周波数の負荷容量特性を表したもので、C1 = 16pF、C0 = 3.5pF、CL = 30pF、CL1 = 27pF、CL2 = 33pF を(3)(5)(6)式に代入した結果を示してあります。


図9 振動子の負荷容量特性


この現象を利用し、水晶振動子の製作偏差や発振回路の素子のバラツキを可変トリマーCv で調整し、発振回路の出力周波数を公称周波数に調整します。(6)式で、負荷容量を小さくすれば、素子感度は上がりますが、逆に安定度が下がります。さらに(7)式に示す様に、振動子の実効抵抗RL が大きくなり、発振しにくくなりますのでご注意下さい。

Fig.9 Frequency vs. load capacitance


3. オーバートーン発振回路例

図10に、オーバートーン用の発振回路例を示します。 基本波回路
(図7)に比べてコイルが2つ付加されます。


図10 標準的なオーバートーン用発振回路


この付加されたコイルの1つは、(トランジスタのエミッタ側に接続されているコイルL01)並列接続されているC02とともに周波数選択回路を構成し、オーバートーン発振を確保するために、基本波もしくは低次の発振を抑圧しています。この接続を選択回路と言い、選択性を得るための条件は、L01とC02の並列共振周波数 Overtone oscillation circuit が所望のオーバートーン次数の周波数とそれより低次のオーバートーン周波数もしくは、 基本波の周波数の中間になる様に、L01、C02の値を設定して下さい。

次に、この発振回路の負性抵抗について、少々説明します。
(2)式において、C02が Overtone oscillation circuit になったと考えると、負性抵抗-Rは、 Overtone 	oscillation circuit となります。負性抵抗は、概ね周波数の2乗に反比例して小さくなります。従ってC01 、C02 は、オーバートーンの場合十分小さい値にする必要があります。

オーバートーン発振において、もう一つ注意しなければならないのは、周波数可変幅です。
(5)式において振動子の等価直列容量C1 は、同じ素板厚、同じ電極寸法でありましても、基本波のときのおよそオーバートーン次数の2 乗して反比例しますので、周波数可変幅は狭くなります。さらに負性抵抗を確保するため、C01 、C02 が小さくなり、一段と可変が難かしくなります。このことは、逆に外部(回路側)の変化に対する周波数安定度が上がっているといえます。周波数可変幅を確保するために、しばしばコイルL02 が付加されます。
コイルL02 は、一般に伸長コイルと呼ばれ、図11 の様に、負荷容量と伸長コイルを直列に接続します。


図11 伸長コイル,負荷容量を付加した等価回路


このときの周波数変化量は、


で表されます。
(8 )式でLa → 0 とすれば、(3)式となります。
このとき、伸長コイルを付加する場合には、1 -Ω2LaCL =0 となる様に、La 、CL の値を設定して下さい。
また、図12 にページャ用1st LO 発振回路の回路例を示しますので参考にして下さい。


図12 ページャ用1st L0 発振回路例


4. 振動子の励振レベルについて

振動子を安定して発振させるためには、ある程度、電力を加えなければなりません。
図13 は、励振レベルによる周波数変化を示した図で、電力が大きくなれば、周波数の変化量も大きくなります。
また、振動子に50mW 程度の電力を加えると破壊に至りますので、通常発振回で使用される場合は、0.1mW 以下(最大で0.5mW 以下)をお推めします。


図13 励振レベル特性


5. 回路パターン設計の際の注意点

発振段から水晶振動子までの発振ループの浮遊容量を極力小さくするため、パターン長は可能な限り短かく設計して下さい。
他の部品及び配線パターンを発振ループにクロスする場合には、浮遊容量の増加を極力抑えて下さい。


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